これからの出版業界について~紙書籍と電子書籍~

※この文章は早稲田大学文化構想学部「出版文化論」という講義で提出したものです。

 わたしは昔から本が好きで、時間ができたときに本屋でのんびり過ごすのが好きだ。本を読むこと自体がおもしろいのはもちろんだが、本の装丁を眺めたり、気に入った本を手に取りページをめくったりしているだけでわくわくする。ところが近年、本屋の減少が止まらない。2005年の17,839店から10年後の2015年には13,488店と4351店も減少している。わたし自身、池袋のリブロ本店の閉店を聞いたときは衝撃を受け、出版業界はかなり厳しい状況なのだろうな、と思わずにはいられなかった。出版業界の不況についての話題になったとき、必ず挙がるのが電子書籍の存在だ。今から10年後の出版業界について考える上でも、電子書籍がもたらす影響を無視することはできない。これから10年間で紙書籍と電子書籍がどのように存在していくのか、わたしなりに考察していく。

 前述のように、わたしは本の装丁やさわり心地が好きだ。だから今まで電子書籍についてはあまり関心がなかった。まだ利用したこともない。しかし最近、電子書籍に関する情報に触れる機会が増え、徐々に興味を持ち始めた。わたしが考える電子書籍のメリットは、

  1. 読みたいと思った時に購入し読み始めることができる点
  2. たくさんの本を持ち歩ける点

だと思う。紙の本は読みたい本ができても書店に足を運んだり、ネットで注文して家に届くまで時間がかかる。またわたしは基本的に何冊かの本を同時並行で読むのだが、そういう場合も電子書籍なら端末1つを持つだけで済む。この2点はわたしにとって大きな魅力である。では、なぜわたしは電子書籍を使わないのか。それは紙書籍の魅力のほうが私を惹きつけるからだ。わたしを惹きつける紙書籍の魅力とは、

  1. 実際に所有し、自分のモノにできる点
  2. 長く(永遠に)存在することができる点

である。電子書籍を購入しただけでは、本当の意味で所有しているとは言えない。自分が本当に好きな本は自分のモノとして所有しておきたい。また紙書籍は電子書籍と比べてはるかに寿命が長い。落としても水にぬれても読めなくなることはない。紙の魅力それだけ?と思うかもしれないがこの2つこそが多くのひとが今も紙書籍を買う理由だと思う。この紙書籍の魅力、価値はこれから先どんなに電子書籍が進歩しても絶対に超えることができないから、紙書籍はこれから先ずっとなくならない。

 わたしはこれから先、紙書籍は前述した2つの魅力を強めていき、今よりも価値のあるものとして存在するようになるのではないかと思う。電子書籍は誰でも気軽に出版できるため、今より全体的な質が下がるということがしばしば指摘される。その中で、優れた作品だけが紙書籍として出版されるようになっていくことで、紙書籍化されることがステータスになっていく。そうすることで、電子書籍は充実し、紙書籍は価値のあるものとなるので、未来の出版業界は今よりも盛り上がっているかもしれない。